◆古本・倉敷「蟲文庫」◆
mushi-bunko.com

2006年07月06日

蟻の励み

このところ、ご近所の某氏の書斎へと日参しています。20畳くらいの部屋にぎっしりと本があり、その中の「もう読まん本」を数冊ずつ括って山にしてあります。わたしはそれを毎日少しずつ少しずつ運び出しているのです。車の運転ができないので自転車です。段ボールひと箱ぶんずつ、一日5〜6往復するともうへとへと。わたしは軽い心疾患があるので、体力には自信がありません。でも某氏も、「まあ、ぼとぼと(”ぼちぼち” のこと)やってくだせえ」と言われるので、そのようにやっています。気分は蟻さんです。蟲文庫なだけに。

郷土史がご専門ですが、このたび処分されるのは文学が中心。

 某氏:「新しい作家ゆうても、高橋和巳までじゃあなぁ」
 蟲 :「......」

なんて具合ですので、単行本のほうは「これが30年前なら....」というような相当キビシイ状態ですが、「目が薄うなっしもうて、もう読めりゃあへんのんじゃ」と大放出された文庫本は、なかなかオモシロ渋いラインナップ。どうやら、ちょっとくだけたものは文庫で読まれていた様子。これはありがたいです。この方は、かなりまっとうな岡山弁を話されるので、勉強にもなります。
ただ、行くたびに、「ああ、これももうええわ」とちょっとずつ増えていくので、山はなかなか小さくなってくれません。


そんなところへ届いた一通のメール便。一昨日のことです。差出人の名前を見て、しばらく固まってしまいました。

 〈石神井書林 内堀弘 拝〉

なぜだかうろたえる蟲文庫。だって、あの『ボン書店の幻ーモダニズム出版社の光と影』(白地社)、『石神井書林 日録』(晶文社)の、あの内堀さまです。もちろん一面識もありません。うわさの目録も、「見てはみたいけど、でもわたくしごときがお願いするのも...(どうせ買えんしな)」とためらい続けてはや数年。な、ナニゴトでしょうか、とドキドキしながら封を切る。

それは、なんとも、今月号の『彷書月刊』に書かせていただいた、「らしからぬ古本屋」についての感想と、店への激励がつづられたお手紙だったのです。あの気の抜けたつたない文章を、気に入ってくださったとのこと。わたしの「美穂」という名前からも、小山清の小説を思い出させる、と小山清について書かれた、『ちくま』の今月号も同封されてありました。

内堀さまは、お手紙の文面も、やはりぐっとくるものでした。蟲文庫、感激にございます。さっそくお返事を書いて投函。

「わ〜い 内堀さんにほめられた〜」というのを励みに、蟻さんは明日も明後日も古本を運びます。
posted by 蟲文庫 at 19:06 | 古本屋日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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