◆古本・倉敷「蟲文庫」◆
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2011年06月21日

キノコからうんこへ・伊沢正名講演会

日曜日の、伊沢正名さんによる「うんこになって考える ~生態系の中で生きていくために~」は、おかげさまで盛況のうちに終了いたしました。お越しくださったみなさま、ありがとうございました。

天然過激な伊沢さんのお話。いちおう心の準備をしていただくためにも、あえて「うんこになって考える」というタイトルを採用したのですが、それでもびっくりされた方もいらっしゃったことと思います(特に画像のほう)。でも、やっぱりすごく面白かったなあ。なんて言えばいいんでしょう、伊沢さんの関わっておられるものも数冊ある福音館書店の科学絵本『たくさんのふしぎ』シリーズ。あの「へえ〜〜、こうなるんだ」という、目からウロコの、あの素朴な感動に似ているでしょうか。

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今回も帳場が「演壇」でした。

伊沢正名(いざわ・まさな)さんといえば、もともとは自然写真家として知られる人物。キノコの写真が特に有名ですが、わたしも『苔とあるく』では、数々のきらめく苔写真をご提供いただきました。しかし、世のデジタル化以降「撮ったものをいくらでも加工できるなんて面白くない」という理由で一線を退かれ、現在は自ら「糞土師(ふんどし)」と名乗り、とかくタブー視されがちなうんこの復権を目的に、分解の素晴らしさや重要性をを広く伝えるべく、このたびの講演のようなことを中心に活動されています。
伊沢さんは、本来、土に還るべきものが、自然のサイクルから排除されていることに疑問を感じ、1974年から意識的野糞を開始。のべ回数は1万回超(1日1回、365日としておよそ30年間)。21世紀になってからは一度もトイレで排便をしていないという、ちょっと信じられないような方なのですが、これ本当なんです。

今回の講演では、自然保護活動から写真家となり、そして現在にいたるご自身の変化に沿ってお話をされました。キノコの写真では、その信じられないほどの美しさに息をのみ、そして、肝心のうんこの写真では、みな呆然とし、そして、うんこが分解されてゆくさまには「おおっ」というどよめきも。どっぷりと伊沢さんワールドに浸かる2時間半でした。

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伊沢さんのキノコ写真。

誤解を恐れず言うならば、伊沢さんのお話(特に実践について)は、ある意味でファンタジーだろうとも思います。例えば「毎日は無理としても、出来るだけ屋外で」という、かなりゆるやかな目標を設定したとしても、まずそれ相応の環境が必要ですし、また女性であれば、そのハードルは数倍に上がります。実際にいまの社会で実践できるのは、ごく僅かの、それこそ「選ばれし人」でしょう。ある人が「(伊沢さんの話を聞いていたら)ナウシカ観たくなった」と言っていましたが、そう、まさにそんな感じ。そして意地悪く言えば、つっこみどころ満載のお話でもあるわけです。
でも、自らを実験台にして取組み、そしてその様子をつぶさに観察し、記録し、考えつづけることをやめない伊沢さんの首尾一貫した姿勢と情熱には、そんなものを越えた説得力と魅力があります。もう単純にすごい。実際、この講演のあと「ぐっときた」「なんだか感動しました」。という声も多くいただきました。
他に「(排泄物に対する)嫌悪感がうすらいだ」「そういえば、自分の子どもが小さい時は、汚いと思うどころか、むしろ関心の対象だったなあ」「(アウトドアにおいて時々そういった機会のある方が)正しい野糞の仕方がわかってうれしい。これで安心です!」「漠然とした思いに、より確かな知識とまた別な視点を与えてもらって、すごく有益な時間だった」、あと、マニアックなところでは「(下肥は味見して熟成具合を確かめるというお話から)味見してみたくなった」というような感想も。

そもそも、食べるよりも出すことのほうが、生き物としてより重要だし気持ちがいいことだと思うのです。だから、その大切なことについて、すこし立ち止まって考えるきっかけにもなったのではないかと思いました。

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スライド上映の様子。


最近では、小学校に呼ばれて今回のようなお話をされることも多いそうです。というのも、いまはイジメの問題で「トイレの個室に入るとからかわれる→学校のトイレに行けない→不登校」というケースも少なくありませんが、伊沢さんのうんこのお話は、その打開策にもつながっているのだとか。

たしかに、伊沢さんの話を聞いたあとは「うんこって良いヤツ」と認識が一変する、というか、そこまでいかなくても、なんとなく興味が出てきます。たぶん、いま伊沢さんが目指しているのは、こういった「視点を変えれば世界が変わる」というようなことだろうと思います。10代や20代の、若い人にも聞いてほしいお話でした。
そうそう、ひょんなことでTOTO(あの水洗トイレメーカー)の社員の方々に話されたエピソードも面白かったなあ。

それにしても、2時間あまりの講演の最中、伊沢さんの口からいったい何回「うんこ」という言葉が発せられのでしょう。紅白歌合戦の最後で野鳥の会の人たちが使っているカチカチするのを片手に数えてみたかったです(なんて、このブログもたいがいですけど)。

しかし、やはりいちばん驚くべきことは、これまでの30年間、ただの一回を除いてずっと野糞をしつづけることが出来る伊沢さんの、その快食快便ぶり(ちなみに伊沢さんは「雑食」)です。だってふつうは、ねえ、奥さん。


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糞土研究会の機関誌「ノグソフィア」。

HP:http://nogusophia.com/
posted by 蟲文庫 at 15:16 | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする