年代順に代表作とともに書簡や関連資料などが展示してあるのですが、ふだんは自分の内側にもわもわっと存在している木山捷平の世界(我が内なる木山捷平のお部屋)の中にあるいくつかを目で確認できるので、見ても見てもみあきませんでした。
今回特によかったのは、『胞子文学名作選』に入っている、太宰治「魚服記」は、もともと神戸雄一が太宰治や木山捷平に呼びかけてはじめた同人誌『海豹』の創刊号(昭和8年)に寄せられたものだったのに気がついたことでした。この号で木山捷平は「出石」を発表しており、その時の太宰からの「捷平兄 治」と署名された、真心のこもった「出石」への批評と、ぜひ「魚服記」への感想もいただきたく、といった内容の手紙も展示されています。じつは、昨年『胞子文学名作選』の編集をしていた時、何かひとつ木山捷平の作品が入れられないものかとかなり探したのです。ただ、「たぶん、ないだろうなあ」という当初の予想どおり、やっぱりなくて残念な思いをしたので、うまく言えませんが、とてもうれしかったです。
その関連でいうと、2階で開催されている「吉備路の近代詩人7人」という展示の中で、正富汪洋と一緒に河井酔茗が写っている写真があって、ああ、このお方が!とはじめて姿を見ることができたのも思いがけないことでした。河井酔茗の「海草の誇」という詩が、やはり『胞子文学…』の中に入っています。この正富汪洋という人は邑久町(現在の瀬戸内市)の出身で、竹久夢二とは同学年で幼なじみだったそう。
その「吉備路の近代詩人7人」というのは、薄田泣菫、正富汪洋、有本芳水、間野捷魯、永瀬清子、安東次男、飯島耕一です。
吉備路文学館:http://www.kibiji.or.jp/
この特別展「木山捷平とその周辺の作家たち」は1月18日(日)まで。また、現在笠岡市立図書館でも「木山捷平と阿佐ケ谷会」という展示が同時開催されています。こちらも近いうちに見に行こうと思っています。吉備路文学館も期間中にもう一度は行きたいです。
帰り道。
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(新入荷のおしらせ)
●サウダージ・ブックスより
『瀬戸内海のスケッチ』黒島伝治作品集 (山本善行 選)2000円+税
『「一人」のうらに』尾崎放哉の島へ(西川勝 著)2000円+税
遅ればせながら蟲文庫にも並べることができました。
●奥入瀬フィールド研究所より。
『奥入瀬渓流コケハンドブック』1200円+税
雪の季節をのぞけば、一年中安定して美しいコケの観察ができる奥入瀬渓流のコケが紹介されています。