◆古本・倉敷「蟲文庫」◆
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2005年09月27日

derek jarmanの庭 4

プロスペクト・コテージの南側の壁には、一面に詩が貼られています。
16世紀のイギリスの詩人、ジョン・ダンの『日の出』
以下、日本語版の訳をそっくりそのまま引用させていただきます。

 日の出

 ひたすらに務めて老いし 日の翁
 いかなれば かくやする
 窓に入り 帳をあけて吾らを訪なう
 汝の巡る時に従い 恋する時の終われとや
 賢しらに言あげて 学舎に
 遅れし子らと手を厭う弟子らを叱り
 犬飼いに王の出を告げ
 地の蟻を刈り入れに呼ぶ
 折り節も季節も刻も日も月も
 すべては時の切れ端 愛を知らず.... 
 汝と吾らがかくは契れば
 汝の幸は半ばにてやむ 哀れやな
 汝は老いし いまははや憩いの時ぞ
 世を温む汝の務めは すでにして果たし終わりぬ
 ここに来て吾らに輝け されば汝はあまねく在ます
 この褥 汝巡る軸 かの壁ぞ汝の照らす空
 

死の床にあったデレク・ジャーマンが、病院から最後の帰宅をしたその日の日記にも
「ピーターはまだ、小屋の側壁に「ひたすら努めて老いし、日の翁」をはめこんでい
る。彼らには小屋の面倒をみてくれるよう頼むつもりである」と書かれてあるので、
おそらく、最後まで貼り終えることが出来たのは、亡くなってからのことなのではな
いかと思いますが、それよりも前の日記に、「夜が来る、小石は闇に溶け込む。星が
出て、ダンジェネスBの巨大客船(蟲注:原子力発電所)の明かりが地平線にまたた
く。たそがれはひとつの奇跡か。海から浮かび出た太陽は、ゆっくりと庭を通り過ぎ
ていく。通りがけに、南面の壁いっぱいに書かれたジョン・ダンの詩と笑いあい、や
がてリッド教会の向こうに沈む」と書かれてあるので、きっとデレク・ジャーマン自
身の中では、既にもうそこに在ったのだろうという気がします。

写真は、私が念願の「デレク・ジャーマンの庭」に到着して、何より初めに
撮った、その壁です。

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posted by 蟲文庫 at 12:24 | ダンジェネスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする