◆古本・倉敷「蟲文庫」◆
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2008年04月27日

熊楠の耳かき

今年に入って、外出らしい外出をしていないぶんということなのか、いつになく本をたくさん買ってしまいました。自宅の本棚があふれてきたので、少し処分しなければと思いつつ、一冊一冊確かめてみても、売れそうな本がほとんどない。
仕事柄、売れる本はできるかぎり売るようにしています。でも、そんな中からも残されてゆく「売れない本」というのは、「愛しているから手放し難くて売れない本」も、もちろんあるにはありますけれど、どちらかというと「愛しているけど店に並べれば数百円。忍びなくてとても売れない本」のほうが多いです。
昨夜も、その本棚の前で、「コレ、全部売ってもなんぼにもならんわなあ」と我ながら呆れたことでした。他人の本棚ならともかく、自分の本棚まで値踏みしてしまうという、この哀しき職業病。

いつだったか、「何年生まれ?」と尋ねられて、「47年です」と答えたら、「西暦?」とからかわれたことがありましたが、そういえばそんな本棚かもしれません。古本屋という仕事がそうさせるのか、はたまた、そうだからこそこの道を選ぶことになったのか、なんともいえませんが。


昨日読んでいた南方熊楠の日記より。

〈朝雪隠へみみかき落す。色々さがせども不得。此みみかきは鉄製英国より持帰りし二本の内一にて、久く熊野及当地にて用し処也。たびたび失しが見出せしに、遂に今日運尽て失はる〉

この耳かき、志し半ばで、おびただしい植物標本のほかは、ほとんど着のみ着のまま帰国したという英国から持ち帰った、僅かばかりの品のひとつと思われます。熊楠の日記は、あまり感情をまじえず、ごく簡潔に書かれてあるのですが、〈遂に今日運尽て〉と記すほどの落胆ぶりが可笑しくも哀しい。熊楠は、在英7年余りのうちに両親があいついで亡くなり、その死に目にもあうことが出来ていないのです。
もちろん、雪隠(せっちん:トイレのこと)で運尽き果てた耳かきもさぞや無念だったことでしょうけれども。

でもそうそう、熊楠先生はものすごく子煩悩で、日々ひたすら綴られている幼い息子、熊弥の挙動や発言については、時折〈可愛らし〉との感懐が述べてあります。
なんとのう可愛らし。

ちなみにこの本は、「手放し難くて」のほう。


今日の関係ない写真。
0804271.JPG
藪の中でねむねむのミルさん。
しばらくよいお天気がつづきそうです。

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千趣会のHPの、「ハルミン流・日々是買物」。
ハルミンさん、現在かなり入手困難になっている、保育社のカラーガイド『コケの世界』を発見されています!すごい!
この本には、わたしもずいぶんお世話になっているのですよ。
http://www.kuratama.jp/handmade/harumin/blog06.htm(4月22日(火)のところです)
いっしょに『苔とあるく』も紹介してくださっています。


posted by 蟲文庫 at 20:16 | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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