◆古本・倉敷「蟲文庫」◆
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2005年12月05日

ダンジェネスはどうした

というメールが友人から届きました。......あう〜....
今年、雑誌の取材旅行という形で連れていってもらった、イギリスはダンジェネス
という町にあるデレク・ジャーマンの庭訪問記。これがストップしているが続きは
どうした、書かないのか。という指摘です。(左側の分類別という所に「ダンジェ
ネスの旅」というのがありますので、ご興味がおありの方は覗いてみてやってくだ
さいませ)

ええっと、そのぉ、あのですね。
ここのところ、古本屋の情けない貧乏話しばかり書き綴っているうちに、「....そ、
そういえば、確かイギリスに行ったのよね、私....」と、なんだかもうすっかり記憶
が遥か彼方のほうへ遠のいておりまして、いまや殆どまぼろしと化しつつあるので
す。と、またしても情けな発言。

それに加えて、折りしも世は歳末。年賀状が(えーと来年戌年よね)、正月の餅が
(あ、これは親戚が送ってくれるかも〜)などとジタバタドタバタしている今の時
期に、いくらなんでも、いきなり「デレク・ジャーマンの世界」へシフトするのは
無理というものです。
また落ち着いたらゆっくりじっくり反芻したいと思っておりますので、その時はど
うぞよろしくおつき合い下さいませ。

ああ、でもちゃんと読んでくれているのね。と、ありがたかったです。

DSCN3807.jpg
そんなわけで、歳末らしくない写真を一枚。
posted by 蟲文庫 at 16:47 | ダンジェネスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月27日

derek jarmanの庭 4

プロスペクト・コテージの南側の壁には、一面に詩が貼られています。
16世紀のイギリスの詩人、ジョン・ダンの『日の出』
以下、日本語版の訳をそっくりそのまま引用させていただきます。

 日の出

 ひたすらに務めて老いし 日の翁
 いかなれば かくやする
 窓に入り 帳をあけて吾らを訪なう
 汝の巡る時に従い 恋する時の終われとや
 賢しらに言あげて 学舎に
 遅れし子らと手を厭う弟子らを叱り
 犬飼いに王の出を告げ
 地の蟻を刈り入れに呼ぶ
 折り節も季節も刻も日も月も
 すべては時の切れ端 愛を知らず.... 
 汝と吾らがかくは契れば
 汝の幸は半ばにてやむ 哀れやな
 汝は老いし いまははや憩いの時ぞ
 世を温む汝の務めは すでにして果たし終わりぬ
 ここに来て吾らに輝け されば汝はあまねく在ます
 この褥 汝巡る軸 かの壁ぞ汝の照らす空
 

死の床にあったデレク・ジャーマンが、病院から最後の帰宅をしたその日の日記にも
「ピーターはまだ、小屋の側壁に「ひたすら努めて老いし、日の翁」をはめこんでい
る。彼らには小屋の面倒をみてくれるよう頼むつもりである」と書かれてあるので、
おそらく、最後まで貼り終えることが出来たのは、亡くなってからのことなのではな
いかと思いますが、それよりも前の日記に、「夜が来る、小石は闇に溶け込む。星が
出て、ダンジェネスBの巨大客船(蟲注:原子力発電所)の明かりが地平線にまたた
く。たそがれはひとつの奇跡か。海から浮かび出た太陽は、ゆっくりと庭を通り過ぎ
ていく。通りがけに、南面の壁いっぱいに書かれたジョン・ダンの詩と笑いあい、や
がてリッド教会の向こうに沈む」と書かれてあるので、きっとデレク・ジャーマン自
身の中では、既にもうそこに在ったのだろうという気がします。

写真は、私が念願の「デレク・ジャーマンの庭」に到着して、何より初めに
撮った、その壁です。

jhond2.jpg

jhond1.jpg



posted by 蟲文庫 at 12:24 | ダンジェネスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月16日

derek jarmanの庭 3

ダンジェネスを訪ねるにあたっての目的のひとつに「穴の空いた石」を拾うとい
うものがありました。珍しい鉱石を集めるというのではないのですが、石は好き
で、普段から旅先などで目が合ったものを拾ったり、たいして高価でなければ石
屋さんやミネラル・ショーなどで買ったりしています。

初めて『デレク・ジャーマンズ・ガーデン』を手にした時から、庭のあちこちに
あしらわれている流木や鉄屑のオブジェに通してある、その「穴の空いた石」が
気になっていました。いったいこの石はなんだろう...と思い、あれこれと著書を
読んでみたところ、どうやらダンジェネスの浜辺などに時々みられる、自然に穴
の空く石らしいというのが判りました。『モダン・ネイチャー』という日記にだ
ったか「浜に”ラッキーストーン(穴の空いた石)を拾いに行く」というような
記述があったと思います。四つ葉のクローバーみたいなもんでしょうか。

ともかく、あの「穴の空いた石」を私も見つけられるのかもしれない〜!!と思
ったら、いや、これは何としても探しあてて持ち帰らねば気が済まない。という
くらいに、実に久々に激しい物欲に捕われてしまったもので、今度は「長年暮ら
していたデレク・ジャーマンならともかく、日本から、ひょこっと訪ねた私なん
かに見つけることが出来るのだろうか」とか「その”石ころだらけの浜”という
のは簡単に行けるようなところなの?」とか「探す時間はあるのだろうか...せ
めて一時間くらいは(私を)”放牧”してもらえないかな...」などと、かなり
しょうもない不安に襲われたりもしていたのですが、実際に行ってみると、ダン
ジェネスという土地そのものが「石ころだらけの浜辺」であり、その気になって
探せば5〜10分にひとつ見つかるくらいの割合で穴が空いており、ふと気が付
いてみれば、同行の皆さまも、それぞれてんで散り散りになって、ただ黙々と「
穴の空いた石」探しをしていたのでした。「(石を探している間は)いや〜...
頭の中、まっ白になりますね...」とは皆の共通の感想。おかげで私も両手に余
るほど拾うことができ、どれを持ち帰ろうかと後でずいぶん迷ったほどです。
四つ葉のクローバーよりずっとラクチンでした。

ところで、なぜ石に穴が...というのは気になるところですが、土地の方数人に
訊ねてみたところ、「海の塩分で溶けだしやすい組成の石なのだ」というのが
順当なところでした。なんか、違うこと言ってる人もいましたが。

そういえば、鉱石好きの人にはサボテン・多肉植物やカメも好きという人が多
いです。上手く説明はできませんが、どこかしら共通する魅力がありますね。

写真は、デレク・ジャーマンの裏庭と私が拾った石です。

derekura.jpg

ana-isi.jpg



posted by 蟲文庫 at 17:46 | ダンジェネスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月09日

derek jarmanの庭 2

    「パラダイスは庭に宿る そして 私の庭に宿る」

『デレク・ジャーマンズ・ガーデン』の中の、最も印象的な一節です。
と、これについて書きかけたのですが、ちょっと上手く纏められなかったので、もう少
し時間を置いて考えるべく、ひとまず食べ物の話に逃避。


イギリスの食べ物といってまず思い浮かぶ「フィッシュ・アンド・チップス」。下の写
真は、デレク・ジャーマンが「イギリスで一番美味しい」と称賛した、ダンジェネスに
ある「ザ・パイロット」というお店の、そのフッシュ・アンド・チップスです。写真で
は大きさがよくわからないと思いますが、30センチ近くはある鱈のフライ&大量のポ
テト。

私くらいの世代ですと、イギリスといえばロックです(いや、そうじゃない方も大勢お
いででしょうが)マーク・ボランもソフト・マシーンもケヴィン・エアーズもニック・
ドレイクもイギリスです(あ、ちなみに、リアルタイムだと、エコー&ザ・バニーメン
とかザ・スミスとかニック・ケイブとかの時代です。念の為)純粋なロック少女も、ヘ
ソの曲がったロック少女もこぞって憧れた街・ロンドン。そしてその当時から刷り込ま
れていたキーワードのひとつに、「イギリスのメシは不味い」というものがありました。

さて、この度の渡英が決り、やはりイギリスの食事情というものは気になるもののひと
つでした。ただし、別に永住するわけではないので「どれくらいマズイんだろう....」と
いう好奇心のほうですが。
で、実際どうであったかというと、冒頭(?)のフッシュ・アンド・チップス。さすが
デレク・ジャーマンをして「イギリス一」(いぎりす〜、ではなく、いぎりす”いち”
です)と言わしめただけのことはあり、とても美味しかったのです。同行の、ロンドン
在住歴10数年の日本人女性の方(ちょっと、ロックねーちゃんなファッションの方で
嬉しかったわん)も「こんな美味しいフィッシュ・アンド・チップスは初めてだし、こ
のお店の料理はどれもものすごく美味しい」と大絶賛。ダンジェネス滞在中は、みな顔
を憶えられるくらい通い詰めていました。なんて、他にお店もないんですけど。

というわけで、なかなかラッキーだったというのと、あとやはり長年「不味い」と評判
だっただけに、全体的に改善されたというのもあるようです。ロンドンでも何度か食事
の機会がありましたが、どれもなかなか結構なお味でございました。ただ、やはり日本
人には量が多過ぎるし味が単調という感は否めません。このフィッシュ・アンド・チッ
プスも、3〜4人でビール飲みながらつつくくらいが丁度いい感じです。

あ、でもそうそう!ギネスは流石!!美味しかったんです〜〜。モルト・ラヴ。
また飲みに行きたい。

2枚目の写真。
「ザ・パイロット」の写真は撮り忘れたので、そのパイロットの駐車場からの眺めです。
ほんとにあまり何もないのです。海と石ころと家がぽつぽつ。

fish&.jpg

pirot.jpg





posted by 蟲文庫 at 17:37 | ダンジェネスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月07日

derek jarmanの庭 1

何度か書きましたが、この6月、本当に、思いも寄らない形でデレク・ジャーマンの庭
を訪ねることができました。「いつかあの庭に立ってみたい」という気持ちがあったの
は、もちろん事実ですが、貧乏と出不精が手を携えて生活してるような私にとっては、
それこそ「小さくなって苔の森を彷徨いたい」だとかいう、ただの妄想と変わらないレ
ベルでの「夢」であったので、「デレク・ジャーマンの庭に行きませんか?」とお話を
いただいた瞬間、何を血迷ったか「青天の霹靂」という言葉が浮かんだくらいです。
だってある日突然、「スモールライト(ドラえもんの)があるんですけど、小さくなっ
てみませんか?」なんて言われたら、誰だって面食らいますよ。

そんなこんなで、殆ど呆然としたまま行って帰ってきたという感じだったのですが、で
も、せっかくのことですから、何か自分なりに形にしておきたいとも思うので、ここで
はひとまず、書き留めるという意味も含めて、あれこれ思い出してみたいと思っていま
す。写真もけっこう撮ってきましたし。

デレク・ジャーマンの庭には、その存在を知ったときから、うすぼんやりと、先日の日
「店の裏山」 にもちらと書いた、重森三玲の庭の思想などにも通じる感覚を覚えてい
ました。デレク・ジャーマン自身が、そんなことを考えていたかどうかは知るよしもあ
りませんが、私よりもそのへんの事にはずっと詳しい知人も、デレク・ジャーマンの庭
といえば、藤原定家の「見渡せば花ももみじもなかりけり浦のとまやの秋の夕暮れ」と
いう歌を連想すると言います。この歌は、茶の湯や枯山水に大きな影響を与えた歌で、
定家はこれを、さびれた海辺の漁師小屋をみて詠んだといいますが、デレク・ジャーマ
ンの庭のある「プロスペクト・コテージ」も、やはり、さびれた漁村にある、100年
以上前に建てられた漁師小屋でした。....まあ、これまた、だからどうした。という話
しかもしれませんが、でも現代の世界の西の端と昔の世界の東の端とが漁師小屋でつな
がる。なんて想像してみるのは、ちょっと鳥肌のたつような愉しさがあります。

なんていう、いきなり自分で自分の首を絞めるようなスゴイところから始めてしまいま
したが、ともかく思いつくままということで、何卒ご寛恕のほど。

そういえば、デレク・ジャーマンが生涯こだわった「モネの睡蓮」(ジャポニズム的志
向に通ず)は、うちの近所の大原美術館にも所蔵されていますが、そのおかげで、フラ
ンスはジベルニーのモネの庭園にある、その睡蓮そのものも、株分けされて美術館の敷
地内にあるのです。ちょびっとだけど。

写真は、イギリスらしい曇り空の海辺と「プロスペクト・コテージ」
季節柄、ずいぶん華やかですが。

uranotomaya.jpg

rixyousi.jpg
posted by 蟲文庫 at 13:43 | ダンジェネスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月27日

海辺をゆくお猿の電車

イギリスの南端。ケント州・ハイズ 〜 ダンジェネス間には、世界最小の公
共の蒸気機関車が走っています。

わずか20キロあまりの区間を、一時間以上かけて走ります。 マラソン選手
なら伴走もできるのでは.....というくらいの、のろのろ運転。「『大脱走』
ごっこ にはもってこいだねー」という冗談も出ようというもの。

われわれ東洋人が乗ってさえ「せま〜」と思う車内は、一度乗り込むと、次
の駅に付くまでは殆ど身動きがとれません。 丁度、古めの観覧車の中のよう
な感覚です。実際、地元の大柄な男性に訊ねると、「わたしは大きいので乗れ
ない」と言われてました。まるで”お猿の電車”です。汽車だけど。

下の写真1枚目をよ〜く見ると、煙りの向こうに機関士のおじさんが見えま
すが、運転席にあぐらをかいて座り、振り返るような姿勢で後方に積まれて
いる石炭をすくってはくべていました。真っ黒のおヒゲも「家に帰って洗う
と、ほんとは真っ白なんだよ(笑)」とのこと。

路線バスなども殆どない土地なので、それなりには「利用」されているのか
もしれませんが、しかし、どちらかというと、イギリス人らしい遊び心によ
って維持運営されているようでした。流れる風景は、緋色の芥子が群生する
牧草地、そして砂浜。 まさに「世界の車窓から」ですが、しかしその向こう
には要塞の如き原子力発電所が.....。と、こちらの話しもまた追々。

写真2枚目は、終点のダンジェネス駅のホームです。ちなみに、切符も何も
なく、出発前に機関士さんが「さっきお金を払ったやつらだけが乗っている
かどうかを見て回る」方式でびっくりしました。

osaru2.jpg

osaru1.jpg


posted by 蟲文庫 at 15:46 | ダンジェネスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月18日

ダンジェネスの地衣類

今年の6月、思いも寄らずデレク・ジャーマンの庭を訪ねる機会に恵まれ
ました。ロンドンから車で2〜3時間、ドーバー海峡のある南の端、天候
によっては海の向こうにフランスが見えるダンジェネスという町です。デ
レク・ジャーマン自身が「世界の外の世界」と呼んだように、地の果てと
いった趣の、荒涼とした石ころだらけの土地。でもそこは私の大好きな地
衣類の宝庫でもありました。

「地衣類」といわれて、ピンとくる方のほうが少ないかもしれませんが、
身近では、木の幹や石垣(墓石などにも顕著)にべたっとくっついている
黄色や灰緑色をした、「苔のような....いやでもなんかチガウ....」よう
なアレです。詳しいことは省きますが、まあともかく(苔以上に)非常に
地味な植物なのです。英語では「Lichen」といいます。

このダンジェネスというところは、この地衣類が、もうほんっとにわさわ
さと「これでもか」というくらい生えておりまして、ワタクシひとりで大
騒ぎ。しかも、最終日の僅か2〜3時間の自由時間に訪ねたロンドンの自
然史博物館のミュージアムショップ内書籍販売コーナーにはにゃんとも、
大々的に「Lichen」コーナーがあり、一般向けの写真の美しい入門書の
ようなものまでありました。日本ではまず考えられません。

もっとも、別の仕事で食いぶちを稼ぐ必要もなく研究に専念出来る方々が
確実な数いらっしゃるということでもあるのでしょうが、ともかく「すご
いーすごいー」を連発しつつ後ろ髪をひかれながら博物館をあとにしたの
でありました。

しかし「自分で地下鉄の切符も買えないのに、”Lichen”はちゃんと読める
んですねえ」と同行の方に笑われたりもいたしましたが。

写真は、石に付いた地衣類とダンジェネスの海辺の風景です。

DSCN3771.jpg

derekumi.jpg

posted by 蟲文庫 at 14:18 | ダンジェネスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月22日

ノッティングヒルのにゃん吉

先月、なんとイギリスへ行ってきました。
観光などをする時間は皆無に等しい、なかなかの強行軍ではありましたが
でも、十年一日が如く帳場に張り付いているのが日常の私には、それはそ
れで珍しく楽しい旅でもありました。

初日と最終日に泊ったロンドン市内ノッティングヒル・ゲートにあるホテ
ルは、嬉しいことに「猫のいるお宿」

写真は看板猫の「チャーチル君」です。しかし、私にとってあまり親しく
ない雄猫はおしなべて「にゃん吉」なので、勝手ににゃん吉と呼んでいま
した。 写真ではよくわかりませんが、すごい巨体です。
高級住宅街にあるホテルで優雅にお暮らしのお猫様は、日本の平民にがし
がし無造作に触りまくられて閉口しておられるご様子でしたが、でももう
けっこうな「おじー」なので、すぐに諦めて触られてくれました。

nixyan.jpg


それにしても、ノラ猫を殆ど見かけなかったのは残念でした。
posted by 蟲文庫 at 12:48 | ダンジェネスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする