◆古本・倉敷「蟲文庫」◆
mushi-bunko.com

2007年04月15日

生きているうちに

雑草の勢いも増してくる季節です。家を出る前に、庭の枝垂れ梅の下にある、ヒツジゴケのマットの間からぴょろぴょろと伸びてきている雑草を抜く。ふだんは、わたしが外出着で近づくと「きゃ〜〜自転車に乗せられるぅ〜〜〜」とばかりに逃げ回るミルさん(でも、そんなことは年に2〜3度だけなのですが)も、わたしがあまりに真剣にコケの間の草を抜いているせいか、なんとなく近寄ってきて、そのへんでごろごろしはじめる。尾崎一雄の庭には、どんなコケが生えていたんだろうなあ、あの文章から推測するには、たぶんスギゴケとハイゴケはあっただろうな、などと思いながらひととおり抜く。それにしても、カタバミの根は深い、びっくりするくらい長い。

少し早めに店に出てきたところへ電話。
「美穂さん?わかるかなあ?もう何年かになるけど」という70〜80代の男性の声。しばらく考えて・・・。
「あ、○○町のN岡さん?」「そうそう、おひさしぶり。わたしも82になりましてなあ、もうそっちほうまでは行かれんようになってしまいましたわ」。

蟲文庫がまだ前の場所にあった頃、よく酸素搭載の電動式車椅子で来てくださっていた常連さん。当時はご自宅から蟲文庫までが2キロ程度の距離だったのですが、店が移転したものだから、さらに2キロ(計4キロ)離れてしまったのです。越した当初に何度か覗いてくださったのですが、もうここ5年ほどまったくみえず、どうされているのかと時々思っていたのです。声はお元気そうで安心する。

向学心の旺盛な方で、古代史や民俗学にも通じておられるのですが、最近は源氏物語の原文(漢字は草体、仮名は変体仮名、おまけに句点なし)の現代語訳に取り組んでおられるそう。全50数巻のうち、いま43巻まで完了しているということ、「最後まで出来るかどうかわからんけどね」と。でもたしか、5年前もそう言いながら何か別のゴッツイことに取り組んでおられたような。

「まあそれで、とりあえず、生きているうちに電話してみようと思いましてな」と、店は順調か、いくつになった? もう結婚相手はみつかったか、など、相変わらずいろいろと心配してくださる。近況報告がてら、店の通信などをお送りする約束をする。
「ああ、電話してみてよかった」と言ってくださる。そうだ、『ちくま』も同封しよう。

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『Whisky Voice』2007年春 27号

サントリー株式会社が発行している小冊子です。
今月号の「モルトのおいしい街」は倉敷篇。
そしてなぜかその特集の扉にちらっと蟲文庫が出てきます。
どこかでみかけたら、のぞいてみてください。

posted by 蟲文庫 at 11:47 | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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